なぜ駅の絵を描くようになったのか 

 私はこのところ駅(正確には駅舎)を専門に描いています。勿論、駅以外にも一般的な風景画や静物など何でも描きますが、駅の絵が圧倒的に多いので、“駅の絵”が私の看板になっています。

 駅を描くことは、まさしく私にとってライフ・ワークとも言えるもので、これからも駅の絵を描き続けていきたいと考えております。

 私が駅を描くようになった動機は、昭和54年に私が東京駅の北口(丸の内側)の真正面にあった国鉄本社に勤務するようになったからです。それまでは、国分寺の鉄道技術研究所に勤めていましたが、特別に駅だけを描こうとは思っていませんでした。しかし、国鉄本社の外務部に転勤してから、幸運にも居ながらにして毎日東京駅を眺めて仕事をするようになったのです。当時の外務部は、本社ビルの4階の一番眺めの良い場所にありました。


 1978年4月に国鉄が民営化され、私もJR東日本の国際課に身を置き、1992年2月に退職するまで同じ本社ビルで仕事を続けることができましたので、東京駅とのかかわりは国鉄時代と同じでした。今、振返って見ますと、東京駅の魅力に引かれたことが、駅の絵を描く切っ掛けになったと思います。


 日本中の数ある駅の中で、私は東京駅が一番好きです。堂々とした風格と共にレンガの色がとても魅力的です。じっと見ていますと、80年の歳月の歴史を私達に語りかけてくれているような、歴史の重みを感じます。これからも東京駅は、ずっと描き続けていきたいと思っております。

 東京駅以外にも、素敵な駅は沢山あります。駅は単なる建物ではありません。そこには人々の出会いがあり、生活があり、そしてドラマがあります。しかし、昔ながらの駅が段々と減って行くのは、少し淋しい気がします。
 最近は、駅の改築があちこちで進められており、モダンで機能的な駅に生れ変わってきています。新しい駅もそれなりに素敵だと思いますが、昔ながらの素朴な駅もなかなか風情があって良いものです。


 旅先で出合った様々な駅を、想い出としてスケッチすることは、とても楽しいことです。

 (旅のスケッチ駅物語より)


 

東京駅丸の内口