”愛すべき友の水彩画展によせて”
交通日本社社長 岡本 定
”いい絵だな”
東京杉並の片ほとりにある茅屋、小さな私の家に三点の絵がかかっている。
中島公園(札幌)−円山公園(札幌)−稲鯨漁港(佐渡)−なる画題、いずれも三号ほどの小品、水彩画である。
私は毎日欠かすことなく、この三点の絵に見入り、いつもそのように感じ思っている。
日課というか、習慣性というか、今にして一度もこの絵を見上げなかった日はない。
”わが心の友大須賀一雄氏の作品である”
もとより絵画のことなど私には皆目分からないが、洋画でも日本画でも決して嫌いではない。
上手とか下手とか、好きとか嫌いとか、私には私の素人感覚がある。
近年、億円とも言われる高額な絵画の、曰く因縁事の記事をマスコミの紙面で散見する。その価値感は知名度にも寄るであろうが、私の感知せざる所であり、単なる世情の風説に過ぎざるものと思いたい。
およそ、絵のことなどはとんと解する術もなき素人の戯言かも知れないが、絵筆を手にする人々には人それぞれの絵心があるはずであり、その絵こそが筆致におのずから具現化されるものと私は私なりに察している。
名は体を表す−と言われるが如く、絵心はその人と人となりを表すに極めて相応しい−と言うも異とするには及ぶまい。つい先年まで、水彩画に興味も関心すら持たなかった私であったが、まるで嘘のように素直な気持ちで水彩画を好きになったのは、この三点の絵に他ならない。正確にして緻密、繊細とも思える写実、もとより絵が上手い。言わずもがなである。
温厚篤実、柔軟なる人間味、虚飾のない村夫子然とした素朴さ−人間大須賀一雄−彼の絵心、その人となりが、画面いっぱいに溢れているようである。水彩画家としても、彼の地歩と評価は日ごとに不動のものになりつつある。彼の大成を私は期待してやまない。
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